因果関係で書く
本日は二次試験対策としても、実際のコンサルティングにも非常に有効と思われる「因果関係で書く」というメソッドについて考える。
その前に、昨日の続きになるが、ある問題に解答する際に盛り込むべき視点は、多いほうがよいのか少ないほうがよいのかという問題についてもう少し考えてみたい。
「限られた文字数で多面的に答えようとするあまり、複数要因の列挙やキーワードの圧縮になってしまった答案」と、「ズバリ本質的な要因を特定して端的に指摘した答案」とで、採点上はどのような違いが生じるのであろうか?
たとえば、「理由」を答えよと問われた場合に、要因として考えられる可能性をなるべく多面的に考えて複数答えるのか、主たる要因に着目してピンポイントで指摘するのかで、どちらがより高得点なのだろうか?
まず、直接的に問われているのは「理由」であるから、出題者が考える「理由」にたどり着けなかった場合、大きく失点する可能性が高い。
また、仮に出題者が「理由」として二つの要因をいずれも欠かせないものと考えていた場合、「理由」を一つしか挙げられないと、やはり半分程度の失点をしてしまうことになる。
このようなリスクを考えて、(制限字数を考慮に入れながら)モレやダブりのない視点から二以上の要素を盛り込むという解答テクニックが一般的なようだ。
では、ここで、「二以上の理由を指摘したが、内ひとつは的外れだった場合(言い方は悪いが「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」的なところがある)」と、「理由は一つしか指摘していないが的を射ている場合」では、どちらが得点が高いのだろうか?別な言い方をすれば、どちらがコンサルタントとして的確なアドバイスをしたと言えるだろうか?
今回、合格答案・(事例ごとの採点結果付き)不合格答案を分析した結果も踏まえて言うと、やはり前者は評価されず、後者のほうが評価されていると思われる。
実際の解答は文章で記述するので、いくつの要素を盛り込んでいるかというのは俄かには判断できないが、たとえば、「AとBは理由として考えうるが、Cは理由として考えるのに無理がある」といった場合、
「AとBの両方を挙げる」「AかBのいずれか一方を挙げる」→OK
「AとBのいずれか+Cを挙げる」→NG(大きく失点)
といった傾向がうかがえた。
サンプル数が少なく、設問ごとの採点結果までは不明なため、推測の域を出ないが、
「AかBの一方のみを挙げる」答案のほうが「A、B、C」の全部を挙げた答案よりも評価が高かった可能性も十分ある。
上記のとおりであるとすると、「多面的に検討することは重要だが、論理的に導きえない内容が解答に紛れ込むのは非常にマズイ」ということになる。
解答におかしな要素が紛れ込むのを回避するための鉄則として「与件文に忠実に」というものがあり、与件から飛躍した思いつきを安易に記述してしまうことを避けるのには有効と思われる。
ただ、中には「一応、与件文の事実には即しているけど、論理展開に無理がある(同時に結論としても妥当ではないことが多い)」と思われる内容を解答してしまう場合もあり、「論理がつながるか?」という観点からの検討も必要であろう。
そして、ここで、冒頭の「因果関係で書く」というメソッドが生きてくることになる。
問題で直接的に問われるのは、「理由」であったり「施策」であったり「留意点」であったりするわけだから、必ずしも解答の文中に因果関係が成立することは求められていないとも言える。
ただし、上で見たとおり、因果関係を意識しないと論理的な飛躍が起こりがちであり、そのようにして根拠のない仮説を提案することは、中小企業診断士としてご法度と言えよう。
逆に言えば、そう考える根拠とともに示された仮説は、少なくとも検討の土俵に上げる価値があるし、複数の仮説を併存させることも可能だ。
とすれば、因果関係の怪しい仮説を数多く列挙することに意味はないが、相応に説得力のある因果関係とともに示された仮説であれば、出題者の想定を多少外れたものであったとしても排除することはできないのではないだろうか?
「因果関係で書く」というメソッドは、過去の経験や個人的な価値観に飛びついた安易な結論を慎重に排除しつつ、収集した事実の何に着目してどのような仮説を導いたのか、思考プロセスが明確になるように記述するということなのだろう。
実際、限られた文字数の中で論理の明確な文章を書くことは、コンサルティング現場においても説得力の源泉になるスキルだと思う。
その点、この記事はずいぶんダラダラと書いてしまったなぁ。