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中小企業診断士受験生の備忘録 改め 中小企業診断士の自分用メモ

「出題の趣旨」に込められたメッセージを探る(「平成25年事例1」編)

昨日は結局、「出題の趣旨」とは無関係な考察になってしまったので、改めて。

 

以前の記事で、気になる表現を抜き出しておいたのを事例1に関して再掲すると以下の通りである。

 

1-1-1「具体的施策」「現行の取扱商品や既存顧客との関係の点から」
1-1-2「効率的な経営管理体制
1-2-2「モチベーションを今後も維持していくための具体的施策」「非経済的インセンティブの点から」
1-3  「どのような役割を期待していると考えられるか」

 

この中で、設問要求としての重要度を今一度検討してみる。

 

1-1-1「具体的施策」(結論:あまり気にしなくてよい)

設問文では、「具体的」の文言がなく、「~必要な施策として~どのような点に留意して~」となっていたため、「出題の趣旨」として具体性を求めているものと考えて抜き出したものだ。だが、よく読むと、問われているのは「施策」ではなく、施策の「留意点」であるから、施策の前に「具体的」という語が補われたことは設問解釈上はとくに意味がないだろう。また、「施策」自体そもそも具体的なものであるとも言える。

よって、この部分にはメッセージ性はない。

 

1-1-1「現行の取扱商品や既存顧客との関係の点から」(結論:強く意識すべき)

一見、設問文の「新商品の企画や新規顧客を開拓していくこと以外」の単なる裏返しで、深い意味はないように見える。だが、模範解答等を見ても「既存顧客との関係」にフォーカスしたものが多く(私自身の解答もそうなっている)、「現行の取扱商品」に着目したものは少ない。「既存顧客」に対してはいろいろとアクションが可能だが、新商品の企画を封じられている以上「現行の取扱商品」に対してできることなどあるのだろうか?と考えてしまうところだが、「既存顧客×現行の取扱商品」という二つの制約条件を明確に意識した解答が必要なものと解釈した。

設問要求を外さないという観点で非常に重要な部分だと思う。

 

1-1-2「効率的な経営管理体制」(結論:ヒントが隠れている)

この部分は、珍しく一歩踏み込んだ表現となっているため非常に重要なヒントとなる。

設問文中の「そうした体制=効率的な経営管理体制」ということを言っており、

つまるところ、「急速な事業拡大にもかかわらず、正規社員の数を大幅に増員せずに成長を実現」したことについて「効率的」との評価を下していることになる。

「今まで同様に効率的な経営管理体制でやっていこう!」というメッセージであり、ここで言われる「効率性」の本質を分析して助言する必要がある。ちなみに、無意識・本能的に行ってきたことかもしれないが、A社社長はこの種の「効率化」については既に十分に身に付けているはずだ。よって、「できていないこと(弱み)を克服する」視点ではなく、「できていること(強み)をより意識的に徹底する」視点での助言となるはずだ。

 

1-2-2「モチベーションを今後も維持していくための具体的施策」「非経済的インセンティブの点から」(結論:ヒントが隠れている)

この部分も、かなり踏み込んだ表現となっており重要だ。

「低水準の離職率の要因=高モチベーション」「賃金制度=経済的インセンティブ」であるということになる。

今回の設問の趣旨を使って分解すると、

離職率が低い」=「モチベーションが高い」=有効策として「経済的インセンティブ(≒賃金制度)」と「非経済的インセンティブ」の二種類有

となる。

設問要求により「経済的インセンティブ」は解答に使えないので、

「非経済的インセンティブによりモチベーションを高めて低離職率を実現する」

というストーリーとなる。

助言問題であるから、非経済的インセンティブを具体的に列挙しつつ、いずれもモチベーション向上を意図したものであることが明確になるような解答が求められるだろう。

 

1-3「どのような役割を期待していると考えられるか」(結論:解答スタイルを左右するため重要)

さして深い意味はないといえばそれまでだが、設問文では直接的には「最近になって~採用するようになった理由」を問われている。

「採用」の背景には、必ず、現在の社内リソースでは充足できない「役割」への期待があるはずということだ。

したがって、最近になって「ある種の」役割を担う人材がいないことを問題視するようになったこと+そのような人材は「大学新卒の正規社員」が担うのがふさわしいとA社では考えていることがわかる。

あとは「一般知識」と「与件」を組み合わせた類推となるが、「採用」の理由を問われた時には、採用した人材の「役割」と、その「役割」が既存の人的リソースでは対応困難な理由を考えるようにするべきだろう。

 

とりとめもなく長くなってしまったが、事例1に関しては総じて示唆に富んだ「出題の趣旨」であったと言えそうだ。