「出題の趣旨」を使って模範解答を斬ってみる(平成25年事例2編、TAC)
今日は注目の事例2である。
「注目の」としたのは、「出題の趣旨」にヒントが多いことと、受験校によっては解答がかなり「出題の趣旨」を外れてしまっているからである。
ということで、今回もTACの模範解答を使って検証してみる。
http://www.tac-school.co.jp/sokuhou/chusho/pdf/jirei2_1310a.pdf
1
ポイント:「継続的な顧客の維持に成功してきた複数の要因」を指摘できているか?
所感:「もしかしたら解答要素が不足しているかも?」という解答
基本的に与件文の抜き出しで対応できるため、今回の事例2の中では易しかった部類の設問であるが、いざ「複数の要因」と言われると心もとない解答も多いのではないだろうか?
基本的には「味わいを守ってきたことに対する強い支持」が主要因となるが、どうも「味わい」以外で顧客維持の成功につながるような要因がもう一つ必要らしい?ので、販路のこと等を書くのがよいのかもしれない。
となると、よく言われる「80字だったら論点2つ」というセオリーは意外と使えそうだ。
2
ポイント:「パッケージとシールの有効活用」ができているか?
所感:「まあ、こんなもんか」といった解答
制約条件?というか、パッケージの仕様に関するディテールが妙に細かく描写されており、誰もが対応に頭を悩ませただろう設問だった。
斬新なアイデアが思いつくかどうかは別として、設問要求はなるべく余すことなく使うスタンスがよいのだろう。
「ビニール素材表面のデザインは柔軟に変更ができる」→せっかくだからデザインは柔軟に変更する
「シールの貼り付けも容易である」→せっかくだからシールを貼り付ける
といった具合だ。
「地域ブランド価値の向上」という設問要求に対応するアイデアがやや弱いことから、よい解答とまでは言えない感はある。
3-1
ポイント:「B社から見たブランドレベル」で評価しているか?
所感:「まあ、こんなもんか」といった解答
一番下の表からB社の実績値に着目することになる。「競争構造の変化」とあるから、競合他社またはカテゴリー全体の動向についても言及が必要だろう。
TAC模範解答ではシェア(の変動)に着目しているが、売上の絶対額(の変動)についても触れた方が、より適切なのでは?という思いもあり、他社解答例等と比較してみたい。
3-2
ポイント:「Yスーパーから見た部門・カテゴリーレベル」で評価しているか?
所感:「やっちまった」感のある解答
一見してわかるとおり、部門・カテゴリーレベルを超えて、スーパー全体レベルの売上変動を評価してしまっている。
ここはやはり、「(直接的には)かまぼこの販促だったが、かまぼこ以外の水産練物にも効果があった」という視点で答えるのが素直だろう。
4-1
ポイント:「収益構造変化」を踏まえた「マーケティングにおける」対策を解答しているか?
所感:「できた人は少なかっただろうけど、趣旨を捉えそこなったかな?」という解答
収益構造変化については、それなりに根拠のある分析をしているが、マーケティングにおける対策としての解答はできていない。また、設問要求が「注意点」であるとは言え、かなり漠然とした解答になってしまっている感もあり、「出題者の意図が見えないなかでリスクを回避した」姿勢が顕著に表れている。ある意味TACらしいのかもしれない。
4-2
ポイント:使ってほしそうな与件を使うべきか?
所感:設問要求に忠実で、面白味はないが確実性のある解答
おそらくは、「X市が観光客誘致に力を入れている」という与件を使うのだろう。それがいちばん美しい。
だが、インターネット販売の売上を確実に増やすなら、TAC案のほうが手っ取り早いし、ブレのない解答が作成できそうではある。
観光客ターゲットというのは「いかにも」感もあり、逆に迷ったという面もあるかもしれない。
TACの模範解答については、事例1、2ともに言えることとして、「設問要求を外す」ことをおそれるあまり、ひねくれた解釈をしてしまい、別な意味で「設問要求から外れて」しまっている解答が多い。もう少し素直でいいんじゃないの?という印象だ。
ただし、模範解答集の解説文等を読むと、いろいろな角度から考察を加えるトレーニングにはなると思う。